今野敏さんのドラマにもなった名作隠蔽捜査シリーズ。
ドロドロとした組織で描く人間模様や個性溢れる刑事など、色んなタイプが見受けられる警察小説の中でもかなり異質な警察官僚物語。
おすすめ作品や感想なども紹介します。
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[2021年版]今野敏の警察小説 隠蔽捜査シリーズの全作品の感想
作者 今野 敏(こんの さとし)
1955年、北海道生まれ。
1978年にデビュー。
2006年に「隠蔽捜査」で第27回吉川英治文学新人賞受賞
2008年に『果断 隠蔽捜査2』で第21回山本周五郎賞受賞、第61回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞。
ジャンルとしては警察小説・SF・アクションなど。
隠蔽捜査の魅力
元々警察庁の官僚であった主人公の竜崎がある降格人事を喰らい、2作目以降警察署の署長となります。
竜崎の正しい事を当たり前にやると言う信念と縦社会の警察組織の絡みがとても面白い。
特に2作目からは降格人事がもたらす階級のズレとキャリアである事の立場が他の人間と絡まって非常に面白い働きをします。
主人公を取り巻く環境のサブキャラ達の存在がまた光っているんですね。
警察の内部の人間ドラマを描いた一級のエンターテイメント作品です。
作品紹介
- 隠蔽捜査(2005年)
- 果断 隠蔽捜査2(2007年)
- 疑心 隠蔽捜査3(2009年)
- 初陣 隠蔽捜査3.5(2010年)スピンオフ短編集
- 転迷 隠蔽捜査4(2011年)
- 宰領 隠蔽捜査5(2013年)
- 自覚 隠蔽捜査5.5(2014年)スピンオフ短編集
- 去就 隠蔽捜査6(2016年)
- 棲月 隠蔽捜査7(2018年)
- 清明 隠蔽捜査8(2020年)
- 探花 隠蔽捜査9(2022年)
- 審議官 隠蔽捜査9.5(2023年)スピンオフ短編集
隠蔽捜査
あらすじ
レビュー 評価7/10
物語の始まりは警察庁の官僚。竜崎はもちろん東大卒のエリート官僚。
珍しく現場寄りではないキャリアのお話です。
エリートらしく正論並べて全然面白くないキャラかと思いきや、物語が進むうちにその正義感の魅力が真っ直ぐすぎて素敵に思えてきます。(だから変人扱いされます)
こんな人が日本を守ってくれてたらと思う様なカッコいい主人公。
不祥事の件でもほんとに不器用だとしか思えないけど、そこがまた良いんです。
次巻への物語の展開が早くも望まれる名作でした。
読まれる方は必ずここから読みましょう。
・果断 隠蔽捜査2
あらすじ
レビュー 評価7/10
前回からの続きで、降格人事を喰らい大森署の警察署長となった竜崎。
いきなりの強盗事件発生で、方面本部長や刑事部長などとの絡み・人間模様がとてもギスギスして面白い。
特に幼馴染で同期の伊丹刑事部長の存在は、このシリーズ通して大きなポイントです。
正しい事をすれば必ず正義は勝つんだなと思うラストにもとても救われます。
続編としても、1冊の本としてもとてもお勧めの1冊です。
疑心 隠蔽捜査3
あらすじ
レビュー 評価5/10
大統領訪日と言う特別警戒の大事な任務を任された竜崎署長。
その秘書に就いた女性キャリアに惚れてしまう。
竜崎も男だったんだと思える葛藤が描かれているが、全体的にはシリーズの中で一番面白くなかったかな。
事件以上に竜崎の恋が事件の中心となっている物語。
転迷 隠蔽捜査4
あらすじ
レビュー 評価8/10
外務省職員の殺人・航空機の墜落・麻取りとの対立。
2転3転するテンポのいい話が、ラストに向かって解決する様はとても気持ちがよい。
前半の謎が、後半一気に解決に向かう流れはミステリーとしても楽しめます。
常に上の者と正しい意見交換をする竜崎の有り方が見ててスッキリします。
流石は隠蔽捜査シリーズと言うべき完成度の高さを持った良作です。
宰領 隠蔽捜査5
あらすじ
レビュー 評価7/10
国会議員の誘拐に始まり、犯人の逃走で分かった神奈川県への潜伏。
警視庁vs神奈川県警の確執を如何にして上手く無くし、事件を挙げる事が出来るのか?が非常に面白かった。
展開的にはもう既にシリーズ特異の物が出来上がってしまっているが、物語の広げ方や人間模様の有り方は毎回楽しませて貰えます。
去就 隠蔽捜査6
あらすじ
レビュー 評価6/10
期待通りの作品である事は間違いなく、いつもの竜崎節全開のストーリー。
物語はマンネリ化してるのだけど、そこに期待している自分がいます。
ある程度予想の範囲内での言動や事件の起こり方なのですが、今回はなんか刺激が足りなかった。
大森署と言う中では、そろそろ限界かなと感じる部分もあり、タイトルやラストの感じからそろそろ異動もあって欲しいなと願います。
棲月 隠蔽捜査7
あらすじ
竜崎伸也、大森署最後の事件!? 正体不明の敵に立ち向かう、激動の長編第7弾。
私鉄と銀行のシステムが次々にダウン。不審に思った大森署署長・竜崎は、いち早く署員を向かわせるが、警視庁の生安部長から横槍が入る。さらに、管内で殺人事件が発生。電話で話した同期の伊丹から「異動の噂が出ている」と告げられた竜崎は、これまでになく動揺する自分に戸惑っていた――。
レビュー 評価8/10
清明 隠蔽捜査8
あらすじ
評価 8/10
神奈川県警の刑事部長のポストに移動した竜崎を待っていた新たな事件。
横浜という事で、中国人絡みの事件の先には公安の闇が待ってる展開。
しかも、同時に奥さんにも問題が発生して、出てきたのは県警のOB。
警視庁と神奈川県警の対立、警察OBとの絡み、公安との問題など、またいつもの竜崎の多難の連続になってます。
とにかく絡み合う線が巧妙すぎて出来すぎた物語になってるんだけど、本当にストーリーに無駄がなく面白かった。
探花 隠蔽捜査9
あらすじ
神奈川県警刑事部長となった竜崎のもとに現れた、同期入庁試験トップの八島という男。福岡県警から赴任してきた彼には、黒い噂がつきまとっていた。さらに横須賀で殺人事件が発生、米海軍の犯罪捜査局から特別捜査官が派遣されることに――。次々と降りかかる外圧に、竜崎は警察官僚としての信念を貫けるのか。
評価 7/10
今作は、神奈川県警に同期トップの八島が福岡から異動してきます。
異動とほぼ同時に起こる殺人事件は、横須賀が舞台で米軍が絡んでくる要素もあり、まさかのネイビー”NCIS”の登場です。(個人的にドラマめっちゃ好き)
福岡県警、千葉県警、警視庁と連動しながら事件を追っていくのですが、テンポもめっちゃ良いし、新たなキャラも、神奈川県警の主要キャラも、一癖あって先が気になってしまいます。
今回の事件にも裏があり大物と接触するのですが、その場でも結局は「面白うそうなやつだ」と気に入られる始末。
隠そうとする同期に、「俺はもみ消すのが大嫌いだ」と一蹴。
最後の最後まで人を己の信じる道で、人の信用を勝ち取る竜崎の存在は素晴らしかったですね。
一夜 隠蔽捜査10(2024/1/17発売)
あらすじ
犯人も目的も安否もわからない中、竜崎はミステリ作家・梅林の助言も得ながら捜査に挑むことに。
劇場型犯罪の裏に隠された、悲劇の夜の真相とは――。
評価 6/10
大好きな隠蔽捜査シリーズ13作目が刊行されましたので早速購入して楽しみましたよ。
今回は、有名作家の誘拐事件。
犯人の要求がないまま時間だけが過ぎて、別の管轄では殺人事件が発生。
友人のミステリー作家がアドバイザーの立ち位置で竜崎に絡み、事件の行方はなかなか妙な方向に進んでいく…。
なんとなくわかりやすい真犯人と計画の内容でしたが、この作品の面白いところは事件の内容じゃなくて、事件を解決するまでの人間関係の絡み方ですよね。
多少のマンネリ感と顛末の分かりやすさはあれど、竜崎という人間を軸に展開していく過程に満足感があります。
次作では、そろそろ強烈なキャラの登場を願ってます。
審議官―隠蔽捜査9.5
キャリアへの反発心を隠さないベテラン捜査員。手続きばかり面倒な捜査本部立ち上げに抗議しようとするも、新任の竜崎刑事部長はこれまでのキャリアとは一味違うようで……(「専門官」)。
どんな時も原理原則を貫くキャリア・竜崎伸也の周囲で日々まき起こる、本編では描かれなかった9つの物語。
評価 8/10
大好きな隠蔽捜査シリーズの最新刊は、スピンオフ作品。
スピンオフは今作で3冊目ですね。
懐かしの大森署の面々も多数登場して、神奈川県警やNCISも絡んでくる9つの短編。
表題の審議官では、いつもの竜崎とは思えない性格を見せるのが面白かったです。
「俺は、人間関係には興味がないんだ」と締める感じが好き。
kindleで最新版の1話が読めます
なんとkindle限定で1話だけ公開されてます。
無料なのでスマホのkindleアプリをDLするかkindleでお読みください。
2冊のスピンオフ物語
「初陣―隠蔽捜査3.5」と「自覚: 隠蔽捜査5.5」に関しては完全に物語の流れを知った上で順番に読むのがお勧めです。
「初陣―隠蔽捜査3.5」の方は伊丹刑事部長の物語で、時折竜崎が登場しアドバイスや叱りつけたりする様なお話。伊丹の弱い部分が書かれています。
「自覚: 隠蔽捜査5.5」はサブで登場してるキャラがメインのお話。
大森署のメンツや野間崎や畠山などのサイドストーリーで、もっとこの話が好きになる事間違い無しの作品になってます。
他にも警察小説シリーズが
今野さんは警察小説のシリーズ物がとても充実しています。
短編集で楽しめる物や本格的な長編シリーズもあるので、またご紹介します。