寺地はるな「水を縫う」感想レビュー・心残った名言紹介

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初めて読む作家 寺地はるなさんの「水を縫う」を読みました。

インスタでよくフォロワーさんの投稿があって気になってた作家さん。

普通の人なんていない。普通の家族なんていない。そんな事をとても考えさせられる、心温まる素敵な作品でした。

感想や心に残った名言をどうぞ。

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寺地はるな「水を縫う」感想レビュー・心残った名言紹介

寺地はるな「水を縫う」あらすじ

松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」。いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。

感想 評価 8/10

「男なのに」刺繍が好きな弟の清澄

「女なのに」かわいいものが苦手な姉の水青

「愛情豊かな母親」になれなかったさつ子

「まっとうな父親」になれなかった全と、その友人・黒田

「いいお嫁さん」になるように育てられた祖母・文枝

世の中の普通を踏み越えていく、6人の家族の物語。

 

家族それぞれの視点で語られる短編でありながら、全ての話が繋がっていて各々の想いが詰まった物語になってます。

普通って何?
あたりまえって何?
男だから、女だからって誰が決めたの?

男の子が手芸をしたり、女の子がかわいい服を否定したり、母親らしい母親になれなかったり、自分のしたい事を我慢してきた祖母。

みんな我慢して生きているよね。
やりたい事の本音と嘘を持ってて、素直になると揶揄したり否定する人とか出てくるから、口に出せないことも沢山あるでしょう。

 

「・・・子どものころ、こわいものがいっぱいありあました」

「でも、自分がこわいと思うもののことを、まわりの人から『そんなん、ぜんぜんたいしたことない』と決めつけられることのほうが、もっとこわかったんです。今でも。今でもそうです。」

お姉ちゃんみたいに伝える勇気がなくて、今まで口に出せなかったとしても、気づいてくれる人もいる。

 

「自分の時代はそうだったから」とあとの時代に押しつけることだけはするまいと、あの時誓った。

おばあちゃんみたいにずっと我慢してきて、年齢で諦めていても、まだ挑戦できるってことを教えてくれる人もいる。

 

母親はどちらかと言うと、世間体を気にして普通を好む人間やのに我慢して生きてきたおばあちゃんの言葉はナイフのように強かったね。

 

「明日、降水確率が50パーセントとするで。あんたはキヨが心配やから、傘を持っていきなさいって言う。

そこから先は、あの子の問題。無視して雨に濡れて、風邪ひいてもそれは、あの子の人生。

今後風邪をひかないためにどうしたらいいか考えるかもしれんし、もしかしたら雨に濡れるのも、結構気持ちええかもよ。

あんたの言うとおり傘持っていっても晴れる可能性もあるし。

あの子には失敗する権利がある。雨に濡れる自由がある。」

このおばあちゃんみたいに好きってことに可能性を感じて、挑戦させる勇気を持って見守れるって素敵だなって思う。

失敗する権利。雨に濡れる自由

いつか子供に言ってやりたい言葉だ。

それぞれが、それぞれの視点で気づきを与えてくれる家族の物語。

 

「外にはお父さんがふたりおるような感じがしてたし、なんていうか、ちょっとお得感があったな。」

父みたい存在の黒田さんも含めて家族と認めてる清澄の言葉に救われる。

本当の父じゃなくても、本当の息子じゃなくても、家族って形はありますよね。

 

「他人の目にかわいらしくうつるのは、けっこう簡単なことやねん。
女の子って基本みんなかわいいからな。存在自体がかわいい。

けどな、本人が着とって落ちつかへんような服はあかん。

座っとるだけでいらいらして、肩に力が入ってしまって、疲れてしまう。疲れとる自分が嫌いになる。」

自分に合った服は、着ている人間の背筋を伸ばす。

服はただ身体を覆うための布ではない。

世界と互角に立ち向かうための力だ。

ダメ男な父も最後に服と向き合う姿が印象的でした。

 

正直230Pページとボリュームが少ない割には中身の濃い内容になってると思います。

ただ、もっと長く読みたかった思える作品なので、短編よりも長編で見たかった気もします。

他の作品も読んでみたいと思える、素敵な気づきを与えてくれる1冊でした。

 

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