前作の「下町ロケット ゴースト」から3ヶ月後のタイミングで、満を持して発売となった新刊であり続編の「下町ロケット ヤタガラス」を読了。
下町ロケットの中でも最高傑作となる様な素晴らしい物語でした。
秋にドラマ化もするみたいですね。
それでは感想をどうぞ。
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池井戸潤「下町ロケット ゴースト」
あらすじ
ベンチャー企業「ギアゴースト」や、ライバル企業「ダイダロス」との“戦い”の行方は――。
帝国重工の財前道生が立ち上げた新たなプロジェクトとは一体――。
そして、実家の危機に直面した番頭・殿村直弘のその後は――。
感想 評価9/10
前作からなんと3ヶ月の短いスパンでの新刊発売。
10月からドラマ化されると言う事で、完全に商業主義炸裂だなwと思いつつも、名作である「下町ロケット」は裏切らない作品である事は分かっているので即購入です。
前作のゴーストは、まだ序章でありこの物語への布石でしかなかったと思ってました。
あの中途半端さと、続編への期待度を思うと半端な期間で出されると困る展開ですよね。
そして、本作「ヤタガラス」ですが、多分みんな分からないよね。
元々は、八咫烏という日本の神話に出てくる「神の使い」らしいですね。
今でも、日本サッカー協会のシンボルマークとなっているやつです。
この作品で描かれるのは、帝国重工の大型ロケットによって宇宙に運ばれた準天頂衛星の名称。
元々ロケット事業から展開していたものを農業に活かせる様に技術開発が進んで、衛星から取り入れた情報によって、無人の農機具が緻密なデータによって動くんですよね。
この技術力によって、高齢化していく日本の農業を救おうとするのが、前回からの下町ロケットなんです。
今回も、立ちはだかる壁
毎度毎度の事ですが、池井戸物語はとてつもない悪い奴が出て来ます。
今回も邪魔者は沢山居るのですが、とりあえず一番の邪魔者となるのが、帝国重工の役員である的場です。
元々は財前が持って来たこの農業計画をオイシイ出世の手段として、手柄を横取りしようと企んできます。
だがオイシイと思ってた計画も、実は記者発表を前に同じ事を考える人達が居たんですね。
この部分は、前作ゴーストを読んでないとちんぷんかんぷんになりますが、元々的場に捨てられてしまった下請け会社の社長である「ダイダロス 重田」と元・帝国重工で的場の部下だった「ギアゴースト 伊丹」そして、野木教授からデータを盗んだ「キーシン 戸川」が中心となったプロジェクト「ダーウィン」というものが同時期に発表されてしまいました。
復讐に燃えるメンツが揃い、下町の会社と共に帝国重工の的場を揺さぶります。
島津は佃製作所へ
前半はマイナス要因でしたが、中盤でやっと物語に追い風が吹きます。
前作で、ギアゴーストに別れを告げた天才技術者「島津」が佃の元にやってきます。
現場で物作りをしたいと思ってた島津の思いと、佃製作所の面々の願いも通じてトランスミッションの開発者としてやって来ました。
前作から予想はしていましたが、一体どのタイミングで入るのかワクワクしてたので喜びの瞬間です。
険しい向かい風は続く…
いきなりやって来た大雨。
殿村の田んぼを襲うまるでこの夏の豪雨かと思う様な悪夢の展開。
辛い…辛すぎる展開を時事ネタで持ってくるのか。
もはやこれは現実かと思う位のリアリティー。
毎回思うのだけど、池井戸さんって落ちる所までとことん向かい風を浴びせますよね。
的場の失態にしても、ダーウィンの追い風にしても、首相の訪問の所にしても期待以上に期待を持たせない展開を持ってくる…。
「一体後何ページ残ってるんだ?」と思うくらい焦らせるのが上手いですw
そして、今回印象に残ったのはどの男達にも貫くべき信念があった事。
目的意識がハッキリした中での、復讐やプライドなどを露わにしていますよね。
男ってめんどくさいって思う部分なんだけど、ここまで貫かれると逆に気持ちいいです。
正義は勝つのだけど、悪も見捨てない
的場にしても、ダーウィンにしても、最後は自滅する様な形であっけなく終わってしまう。
今回も正義は勝つのスタイルで、意志を貫いた者達に勝利を齎したのだが、残されたダーウィンのトラクターを買った顧客達も見捨てない精神が際立って良かった。
天下の帝国重工なら、「ライバルよ潰れてありがとう」って感じで終わりそうなんだけど、財前あなたが居てくれて良かったよ。
さて次があるなら、何に挑戦するのだろうか?
日本の農業の未来に
今回のテーマであった日本の農業の未来への視点。
色んな所で書かれていますが、農業って高齢化と共に自然災害増による不安定さで非常に若い方が離れていってる現状です。
特に日本は少子化による人口の先細りは、目に見えてるのでこの部分だけは食糧危機と共に懸念される部分。
早く自動化される様な農機具がどんどん一般化してくれたら、世の中もっと変わるのになぁと願ってます。
仲間がいたんだ。その仲間が、素晴らしい知恵を出して農業を救おうと頑張ってくれている。
こんなうれしいことがあるでしょうか」
殿村の父と佃のやりとりに胸を熱くさせられたね。
日本の技術革新を願って乾杯したいです。
まとめ
とにかく池井戸さんの描く人達は、本当に魂が篭ってて素敵な人ばかり。
今回は特に熱い男達の生き様と、日本の問題点をこんな形で描いでくれて、社会派としても優秀な作品だと思いました。
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