雫井脩介の作品「火の粉」を読了。
雫井さんの本は「犯人に告ぐ」「クローズドノート」に続いて3作目となります。
過去最高の名作の域に匹敵していて、人間の怖さを非常にシリアスに表現した作品でした。
感想をどうぞ。
雫井脩介「火の粉」
あらすじ
感想 評価9/10
裁判官が下した無罪の判決。
その後、偶然にも隣人となった元容疑者である武内。
退官後の裁判官の生活の前に現れ、その後巻き起こる不思議な出来事がゾクゾクするほどに怖いんですね。
・竹内に介護の手伝いをして貰うと、10日後に喉に詰まらせて死んでしまう祖母。
・元彼と過去の暴露で急激に冷え込む夫婦関係
こんな出来事が起きた後にいきなりやって来た、武内に殺された家族のヒステリックな訴えを聞くが、武内に取り入れられた家族はもう雪見の言う事に耳を貸さなく無っていく。
武内が本当にサイコパスであり、殺人鬼であればこれは非常にヤバイ事態なんだけど、誰も目を覚まさないどころか、どんどん武内と仲良くなっていくんですよね。
本当に馬鹿かと思えるくらい素直に仲良くな家族と、引き離される雪見の存在が悲しくなる。
これで武内がミスリードであり、被害者家族の池元が真犯人だったらヤバイなと言う2者択一の状況。
つまり先の読めないドキドキの展開である。
うまい具合に中盤以降は、武内が動いてくれたお陰で一気に物語はヤバイ方向に進む。
徐々に目を覚ましていく元裁判官は、遂に自分が殺人鬼を世の中に解き放った事を知る。
俊郎の馬鹿さ加減に嫌気が差してくるが、それでも簡単には人間は変われないのだ。
ラストは、変貌した武内の逆上劇であったが、まさかのラストシーンがまた裁判だとはまた見事であった。
貴志祐介さんの作品に近いものを感じたが、人間の怖さと言う意味では、桐野夏生さんの不気味さにも近いものを感じる。
後味は非常に悪いのだが、読んでる最中のドキドキ感は、スリリングでとても面白いのだからやめられない。
600ページに匹敵する長さだが、長さを感じられずに読める名作でした。
興味ある方は、この辺の記事を参考にして欲しいですね。