寺地はるなさんの「夜が暗いとは限らない」を読みました。
日常を淡々と描いた15話の短編集の中に、誰もがきっと共感できる出来事や言葉が詰まった作品となっていました。
寺地さんの本を読むと、毎回人の気持ちを考えようとする力が湧いてきますね。
感想やレビューをどうぞ。
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寺地はるな「夜が暗いとはがぎらない」を読んだ感想 心に残った名言
寺地はるな「夜が暗いとはがぎらない」あらすじ
『大人は泣かないと思っていた』で話題沸騰の著者が贈る感動作!
大阪市近郊にある暁町。閉店が決まった「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが突然失踪した。かと思いきや、町のあちこちに出没し、人助けをしているという。いったいなぜ――? さまざまな葛藤を抱えながら今日も頑張る人たちに寄りそう、心にやさしい明かりをともす13の物語。
感想 評価 8/10
暁町にある「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが失踪した。
あかつきんの目撃情報がゆるく繋がりながる15話の短編。
エピソード毎に主人公は変わるのだけど、前のエピソードに出てきた人たちが様々な形でリンクしているので、色んな角度で物語が楽しめる設定。
「誰だっけ?」と思ってページは戻り、また再開して、また戻り・・・全然前に進まへん。
街ですれ違ったあの人も、仕事先であったあの人も、自分には分からない苦悩を抱えてるかもしれない。
1話が2~30ページ程度なのに、寺地さんの描く短編ってめっちゃ印象深いエピソードと言葉で作られてるので、立体感がすごいんですよね。
ふーん位で終わる短編に共感したい言葉が沢山詰まってるからすごい。
女性だけじゃなく、赤ちゃんからおじいちゃんまで、どうしてこんなに人の気持ちを代弁できるの?っていつもながらに感心します。
生きるって事に悩んだり、愛する人のために悩んだり、私たちの悩みは常に尽きないけど、そんな心を少しでも軽くしてくれる言葉が詰まってます。
一色で塗りつぶせるような単純な人間なんかいない。
澄んだ色、濁った色、やさしい色、きっぱりとした色。
あらゆる色が、ひとりの人間のなかに存在しているのだ。
「この人はこういう人」と簡単に色分けできると思いこんでいた私たちは世間知らずで、傲慢だった。
人それぞれの生き方、考え方があって当たり前やしね。
朝は明るいとはかぎらないし、夜は暗いとはかぎらない。
味わい深いな。
もしかしたら夫は、洗濯機には「洗濯が終わるとなかみを取り出して皺を伸ばし籠に入れ、気象予報を睨みつつ晴れならばベランダへ、雨ならば浴室へ運び、きっちりと干し、乾いたら取りこんできれいに畳んでたんすの家族別の抽斗に収納してくれるボタン」があると本気で勘違いしているのかもしれない。
これは、痛烈なあるあるネタやろ。
どうして平気なのだろう、自分の名を背負って生きてきたこれまでをどう感じているのだろう?
どうして、誰かの母親であるという事実を自分の存在そのものにしてしまえるのだろう。
親になった瞬間に名前を呼ばれる事って、本当に少なくなるんだろうな。
喋ってくれることだけでじゅうぶんですよ。心の中まで手におえないです」
ほんとこれですよね。
これはダメージでかい言葉だよね。
他人の期待に応えるために生まれてきたわけやない。他人に渡したらあかん」
寺地さんの本読むとよく出てくる、自分の意思を貫こうとする言葉。素敵。
若い娘だった頃、いろんな人にそう言われた。
二十歳を過ぎたら、まわりの人が「早く結婚しなきゃね」というようになって、おどろいた。
だってちょっと前まで、男の人に近づくのはいけないことだと言っていたのに。
結婚したら、はやく子どもを産まなきゃね、と言われるようになった。
産んだらすぐに、ふたりめはまだ?
男の子を産んだのなら、次は女の子ね。
ひとりっ子はかわいそうだもん。
今まで何も思わなかったけど、改めて言われてると凄いことだよね・・。
他の子みたいに笑わなくても、他の子みたいに泣かなくても。
「誰かの涙を拭いてあげられる子は、きっとだいじょうぶ。生きていけます。」
誰かの涙を拭いてあげられる子になりたい。
だけど、誰かの人生の物語の場面のひとつになったはずだ。
あの日、あかつきんというへんな着ぐるみに遭遇した。
誰かがそうやって思い出す時、一緒にあかつきマーケットのことを思い出してくれたらいい。
妖精が運んでくる小さな奇跡がなくても、人生は続いていくから。
そう、奇跡なんて必要ないよね。
寺地さんの本を読むと、毎回自分の見てた世界の見方が変わるからすごい。
次は最新作を読みましょう。
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