辻村深月「凍りのくじら」を読んでの少し感想 ドラえもん好きになる

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久しぶりに初めましての作家さんの物語にお邪魔しました。

名前は良く知ってましたが、なかなか読む機会に巡り合わなかったんですね。

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辻村深月「凍りのくじら」

凍りのくじら あらすじ

高校2年、芦沢理帆子――。「家に帰れば、本が読めるから」誰と話しても、本気で楽しいと思
藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う1人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき――。

 

感想 評価 8/10

評価めっちゃ高いんですが、久々にこんなに感銘を受けた作品に出逢いました

前半の嫌悪感は若干ありつつも、中盤以降は物語の世界観と主人公が尊敬する不二子先生の「ドラえもん」へリンクがとても心地良かった。

 

この物語は主人公視点の一人称からずっと話が続くので、ほんとに淡々としたペースでスローに進んでいく。

それ故に序盤の展開の分からない掴みの部分が「少し・苦痛」であった。

だが2章の「カワイソメダル」でキーマンの別所が登場してからは物語に光が差した。

 

「少し・フラット」な彼の存在が彼女を動かしていくと話の流れがガラッと変わる。

末期のガンと闘病する「少し・不幸」な母

5年前にガンの発覚と共に失踪してしまった「少し・不完全」な父

自尊心の高く幼稚な「少し・不足」な元カレ

この4人を主にして物語はどのような終末を迎えるのか?

 

中盤になると作者の意図と物語の行方を予想するのですが、母以外の結末が見えてこないんですよね。

元カレからのストーカー行為は徐々にエスカレートしていき、段々と2人の世界は壊れていくのだが理帆子はそこには全く執着せずに彼のプライドはどんどん傷つけられていく。

そんな中で出会った父の友人であり、母のサポートをしてくれる存在でもある松永の隠し子「郁也

小学4年のこの子の存在がまた理帆子に大きな影響を与えていく。

 

物語の終盤はもう圧巻の展開で、思った以上に切なくて涙が止まらなかった

予想してた通りの母の死が訪れた時には、この物語の本当の意味を知ってしまうのだ。(そこは薄々感ずいては居たのですが、やっぱり見ていたのは幻影だったんですよね。)

 

それにしても元カレは最後までやってくれましたね。

ラストは救いがないのかと思いきや、エピローグではなんと心温まる展開になり一安心。

再びプロローグを読むと見事に繋がったのでした

 

読んでいる感じがまるで道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」でしたね。

読んだことある方には物語のネタバレになってしまうけど、そっちよりも全然私は好きで、特に作者の描いた各章の「ドラえもん」の道具とのリンクが素晴らしくて良かったです。

小学生の時にアニメでしか見たことないし、漫画を機会があれば読みたいなと思いました。

 

アマゾンのレビューが低いのは最初の話の展開の悪さと物語の暗さにより、読み進めるのが面白くないからじゃないかと思います。

主人公のキャラは人の好みによると思いますが、話の構成や世界観はかなり評価されて良いと思いますね。

と言う事で、すぐに「スローハイツの神様」買って来ましたよ。

次はこれ読もう。

 

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