朝井リョウさんの「桐島、部活やめるってよ」を読了しました。
朝井さんの作品は「何者」「スペードの3」「もういちど生まれる」「少女は卒業しない」に次いで5作目。
今回もものの見事なストーリーに思春期の学生たちの見事な表現力に脱帽しました。
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朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
あらすじ
バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が突然部活をやめた。
それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に、小さな、しかし確実な波紋が広がっていく。
野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。
部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。
桐島はどうして部活をやめたのか?
17歳の彼らは何を抱えているのか?
物語をなぞるうち、いつしか「あの頃」の自分が踏み出した「一歩」に思い当たる……。
世代を超えて胸に迫る青春小説の傑作! 第22回小説すばる新人賞受賞作。
感想 評価7/10
この作品は浅井さんの学生時に書かれた小説で、当時タイトルが鮮烈過ぎて手に取ることがなかったんですよ。
「やめるってよ」
それってなんの報告だ!くだらんわ。
と勝手に若手作家のつまらない青春物語かとレッテルを貼ってしまってました。
そこから遅れる事8年も経ってようやく巡り巡って読むことが出来ました。
既に朝井さんの作品の素晴らしさを理解した上での本書だったので十分に楽しめましたよ。
この本はタイトルの桐島と言う人物を軸に物語が進むわけではありません。
むしろ本人も本人の言葉すら出できません。
桐島という人物像と部活をやめてしまったという話を話題にした、その周りに居る生徒たちの抱えるリアルな感情や葛藤を上手く表現した現代版の青春小説です。
本書は短編小説になっており、異なる人物の視点で話が色んな角度から見えてくる仕組みとなっています。
- 菊池宏樹
- 小泉風助(バレー部)
- 沢島亜矢(ブラスバンド部)
- 前田涼也(映画部)
- 宮部実果(ソフトボール部)
- 菊池宏樹(野球部)
- 東原かすみ(バドミントン部)ここだけ過去の話
こんな流れで時間軸がずれた話が、リンクしながら繰り返されます。
章を重ねる毎に見えてくる生徒達の本心。
だがやっぱり出てくるのは他人を妬んだり、羨んだり、恋してたりと思春期ならではの悩みと苛立ちが上手く表現されているんです。
これは本書だけではなく、後に書かれたどの本でもそうですが上手いんですよね表現が。
特に見事すぎたのが「沢島亜矢」の章でのチャットモンチーの曲を元にした言葉。
「つまさき」が痛いと何度も出てきますが、これもチャットモンチーの曲にちなんだ比喩だと思います。(詳しくは曲を聞いてほしい)
そして、一番良かったのが映画部の「前田涼也」の章。
映画部という暗い存在の劣等感にクラスで一番目立たない自分たち。
あの頃ってやっぱりスポーツできる男子が輝くんですよね。
文科系の分に男が居ると根暗な印象でとっても馬鹿にされます。
そのポジションを上手く表現されてるんですよ。
そこで出てくる昔の同級生の「東原かすみ」の存在が素晴らしく良い。
最後にまた出てくるんだけど、やっぱりこの子にも悩みがあるんです。
みんな自分だけ悩みを抱え他人は輝いて見える世界だと思ってしまいがちですが、やっぱり見えない悩みが沢山あるんですよ。
羨ましく思える存在も、憧れも、優劣も色々あるんだけどそんな悩みを抱えながら大人になっていく。
前回読んだ「少女は卒業しない」もこれの延長線上にあると思うし、「スペードの3」も大人の世界でそれを乗り越えられなかった人の物語。
ほんと上手く表現されてます。
あの頃の世界を思い出すのも良いし、自分の悩みに対して正直になりたいって感情がある方なら朝井さんの小説は楽しめると思います。
次は何読もうかな。
レビューもチェック
本書で鳴ってるチャットモンチーの曲はこれを聴いてね
「恋の煙」「風吹けば恋」
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