桐野夏生さんのベストセラー小説「OUT」を読みました。
前評判そのままに、あっという間に読み進められる恐ろしき作品。
物語の構成や人物の描写はもちろん、最後まで予想できない展開で読み手の関心が尽きない作品。
久しぶりにすごい物語を読んだと思ったので、これは紹介しましょう。
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桐野夏生「OUT(アウト)
あらすじ
自由への出口か、破滅への扉か? 四人の女たちが突っ走る荒涼たる魂の遍路。
感想 評価10/10
久しぶりに会心のサスペンス小説。
圧倒的な構成と人物の描写力は素晴らしく、上下通して800P近い分厚さもあっという間に読めました。
物語は普通の田舎にある弁当工場。
そこに努めるパート主婦が主人公。
どこでもありそうな問題を抱える家庭と、その中に潜む闇が引き起こしていく顛末。
途中死体が出てからは、物凄くグロい話になるのだが先が気になって仕方がない。
とにかく人が怖すぎて、途中で止まらないのだ。
この辺りは筆者の見事な設定と緻密な描写によるものだと思う。
複雑に視点が変わる物語と違い、とても丁寧にその人物の描写を描いてるので分かりやすい上に同情しやすいのだ。
そして、4人のパート主婦の設定も見事。
誰もが安易に持ってるような感情を豊かに見せる姿が面白いので、より共感しやすいのだろう。
殺人処理後の強い結びつきから、その関係が気薄に離れていくシーンも見事。
あまりにもバカな邦子の存在が世の中を象徴している感じが堪らなく悲しいけどね。
最後はバットエンドにもハッピーエンドにもならないが、その分読後感は悪くならなかった。
ブラジルに行って、あの子との最後を期待したかったけどちょっと淡かったのかな。
あまりにも人間のグロい部分を丸裸にした暗闇の小説だったが、劣等感を持つ事で安心するのだろう。
こんな話はポジティブ過ぎる物と同じ位ウケる気がする。
それにしても、こんなに物語を読むのを深く味わいながら楽しめたのはいつぶりだろうかな?
ハサミ男や残虐にいたる病などを思い出すグロさだったが、物語的には白夜行を思い出す。
数年に1度こんな作品読むと読書の醍醐味を感じます。
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こんな作品もお勧めです
東野圭吾「白夜行」
東野さんの最高傑作。
こちらも物語の構成が見事で、闇の中で生きる二人の起こす事件がとてもつらい。
殊能将之「ハサミ男」
こちらはミステリーの中でも、叙述トリックを用いた気持ちよく騙される感じ。
1度しか使えないけども、この構成はお見事なので未読の方は要チェック。