2020年前期の直木賞候補となった作品の1冊である伊吹有喜さんの「雲を紡ぐ」を読みました。
壊れかけた家族の再生と、岩手県の名産であるホームスパンを題材にしたとても美しくて、温かい家族の物語。
直木賞は残念ながら逃しましたが、受賞作以上に感動した作品なので、ぜひ読んで貰いたい1冊。
感想と心に残った名言をどうぞ。
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伊吹有喜「雲を紡ぐ」を読んだ感想レビュー 心に残る名言 [直木賞候補]
伊吹有喜「雲を紡ぐ」あらすじ
壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか?
羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。
ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。
美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。
一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。
実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた――。
感想 評価9/10
「ミッドナイト・バス」以来の伊吹さん。
些細なことが原因で、学校に通えなくなった少女が家出して向かったのは、ホームスパンの工房を営む岩手にある祖父の実家。
伝統、故郷、家族をめぐる3世代の心の糸の物語。
掛け違えてしまった家族の再生の物語と共にホームスパンを紡ぐ、岩手の美しき情景が浮かんでくるとても美しい小説です。
ホームスパンって家で、紡ぐの名の通り、羊毛を染める所から、紡ぎ、手織りする、イギリスから伝わった岩手の名産品。
細かい工程と共に、モノ作りへの拘りがとても細かく描かれていて読んでて面白かった。
こう言ったモノ作りに込めた想いが小説になってまた違う世代、知らない人達に伝わっていくのはとても素晴らしいですね。
父の作る家電だって、故郷や家業を捨てても、心意気だけはそこに詰まってる。
それを黙って使い続ける祖父の姿も素敵です。
決して言葉の多くない祖父でしたが、一言一言に重みがありましたね。
そして、そこから何かを得ようとしている。美に感応できる素直な心はなにものにもかえがたい。
蒔かれた種は、今豊かに芽吹こうとしているんだ。失敗?どこを指して失敗というんだ。見事だ」
娘、父、母、祖父、祖母どの立場から読んでいても、感情移入することの出来ると思う。
親の子を思う気持ち。
祖父の発した「子供と過ごす時間は案外、短い」と言ってた言葉に時間の大切さをしんみりと感じました。
最後にホームスパンを自分で作る決意をした美緒の覚悟も素敵でした。
私も18年過ごした故郷から飛び出してもう15年も経ちました。
年に数回会う親の姿もどんどん変わっていき、時の早さを感じます。
子供も親と過ごせる時間は限られてるので、今はその大切さを噛み締めながら生きていきたいと思います。
お前が幸せなら、みんなが幸せだ。そうでしょう?」
あー今回は、すごく好きな作品に出逢えました。
岩手行ったことがないんだけど、読んでるだけで盛岡の情景がイメージできる位に美しさを感じます。
これは何度も読み返したくなる作品になりそうです。
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