伊坂幸太郎「ホワイトラビット」感想・ネタバレ ラッシュライフを超える名作

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伊坂幸太郎さんの新刊「ホワイトラビット」を読み終わった。

久しぶりにノンストップで読みたくなる圧倒的な面白さ。

ラッシュライフ以来のこの衝撃的な展開にファンは歓喜でしょう。

ネタバレを含む感想をどうぞ。

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あらすじ

楽しさを追求したら、こういう小説になりました。最新書き下ろし長編は、予測不能の籠城ミステリーです! 仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。「白兎事件」の全貌を知ることができるのはあなただけ! 伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX! あの泥棒も登場します。

感想 評価10/10

ほんと久々に名作に出会った気分の1冊。

ちなみに伊坂さんの作品は「ラッシュライフ」「アヒルと鴨のコインロッカー」「オーデュボンの祈り」「チルドレン」などが特に好きなんです。

本書の雰囲気としては「グラスホッパー」の物語に近い感じもあるんですが、時間軸のズレ方や黒澤の登場で「ラッシュライフ」好きな人は絶対好きですね。

ジェットコースターに乗ってる位に颯爽と場面変化があって、複雑に絡み合う物語の形成はもうお手の物。

昔よりもポップな会話と会話から出てくるキーワードの伏線が後半にかけてジワジワと効いてくるんですよね。

 

主な登場人物

・兎田孝則・・・人を誘拐するグループの誘拐係

・綿子ちゃん・・・兎田の妻

・黒澤・・・伊坂作品でお馴染みの泥棒・探偵

・中村・・・泥棒仲間

・今村・・・泥棒仲間

・若葉・・・中村の妻

・折尾豊・・・コンサルタント。オリオン座に詳しい。別名「オリオオリオ」

・稲葉・・・人を誘拐するグループのボス

・勇介・・・兎田のたてこもる家の子供

・勇介の母・・・兎田のたてこもる家の母

・夏之目・・・警察

・春日部・・・警察

・大島・・・警察

 

物語の整理(ネタバレ)

ラッシュライフまでも複雑じゃないので、普通に読んでしまえば解説があるので結構わかりやすく理解できると思います。

それでも、中盤以降は一気に伏線回収のネタバレがどんどん爆発していくので「アレ??」って事も多いと思います。

とにかく前半と後半で物語は繋がっているが、全部前後すると考えてください。

 

ネタバレすると、前半起こっている立てこもりの家の中と場面の続く警察の様子は時間軸でズレていて、その場面は繋がっておりません。

なので後半の黒澤が折尾に扮して出てくると「何故?」と思うはずです。

 

つまり前半の家の中の出来事を午前中とすると、それは作戦会議であり、警察とマスコミが出てくる立てこもりの現場はその作戦を実行した午後の場面ということになるんですね。(例えなので正確な時間は分かりません)

場面を一気に読ませて、後でその抜けている所を挟み込んで伏線を回収する見事なテク。

しかも、今作は第3者の目線で解説しながら語ってくれているのでとても分かりやすくついていけるはず。

それにしても重要ワードが他の場面の会話で出て来て、それが見事に伏線として回収されるテクニックは読んでて無駄にできずワクワク感があって面白いです。

殺し屋系の「マリアビートル」も悪くなかったけど、個人的には「AX」にあまり興味がなくてスルーしてたけど、こっちは買って正解でした。

 

登場人物(ネタバレ後)

・兎田孝則・・・人を誘拐するグループの誘拐係であり、稲葉に綿子ちゃんを人質にとられ「折尾」を連れてこいと脅された立てこもりの実行犯。

・綿子ちゃん・・・兎田の妻であり、稲葉の人質。

・黒澤・・・お馴染みの泥棒であり、今回の立てこもりをややこしくした実行犯。忍び込んだ家で勇介の父のふりをして兎田にバレて、この事件の筋書きを考え、自らも折尾に扮して協力。

・中村・・・泥棒仲間であり、佐藤家で立てこもり犯として協力。

・今村・・・泥棒仲間であり、黒澤の不運な運命を作った張本人。佐藤家で立てこもり犯として協力。

・若葉・・・中村の妻であり、近所の通報人として協力。

・折尾豊・・・コンサルタント。オリオン座に詳しい。別名「オリオオリオ」。稲葉のグループに追われながらも、不運な事に勇介にぶつかり、喧嘩になって頭を強打して死亡。勇介の家に隠されたが、最後は立てこもりの実行犯の罪を被される形になり2階から落とされる。

・稲葉・・・人を誘拐するグループのボス。最終的に捕まる。

・勇介・・・兎田のたてこもる家の子供。折尾を不運にも殺してしまう。

・夏之目・・・警察。娘と母を殺した高齢者に取り入った占い師を殺し、山に投げた事を告白。

 

「そう、難しいのは、どうやってここに止まるかという事だな」

「いや、違います」とフォーシュヴァンはこう言った。「どうやってここから出るかということです」

ジャン・ヴァルジャンは心臓の血が逆流するのを感じた。

「ここから出る」

「そうです。マドレーヌさん。はいり直すには、まずここから出なくてならならいのですわい」

レミゼラブルより

 

本書の最初に書かれていた文章ですが、読み終わった後やっと腑に落ちましたね。

 

そういえば「渡り鳥に、渡る時季を教えたやつ」は誰なんだろう。

どうでも良いけどまたレミゼラブルが見たくなったし、何よりも星座について詳しく知識を身につけてベラベラ喋ってみたくなりましたよ。

 

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