本屋大賞でも話題の瀬尾まいこさんの小説・エッセイなどの全作品や読んだ感想など紹介します。
本屋大賞受賞作でもある「そして、バトンは渡された」以外にも、温かな人間味溢れる作品が多く、読んだ後にほっこりさせて貰える清々しさが心地の良い作者です。
元気になれる本だったり、泣けて、笑える物語が多く、楽しみながら考えさせられる場面も多いです。
瀬尾まいこ 全作品一覧を順番にご紹介(新作・おすすめ・感想)
1.卵の緒(2002年)
評価 7/10
瀬尾さんにしか書けない独特の言葉や表現方法が好き。
そんな作品の原点となるデビュー作がこれ。
なんで先に読まなかったのか・・って思うほどに、今の瀬尾さんの作品の根底が見える作品。
2話の短編からなるそれぞれ異なる家族の形。
生まれた境遇がどれだけ不幸でも、それを感じさせないポジティブさ全開。
常に前向きだし、物語の悲しい気分が描き方一つで、晴れ晴れするんですよね。
七生が七子と別れる際に髪を切ってと言ったワンシーン。
「・・・ただ、七生がここにいたっていう感覚を、ちょっとの間、リアルにのこしておきたいだけ」
なんか感情がふわっと広がるのが、心地いい読後感にもつながりました。
2.図書館の神様(2003年)
評価 6/10
瀬尾さんの書かれた2作目の作品との事ですが、17年前の作品には思えない今に繋がるキャラのユーモア溢れる言葉のセンスと文体のポップさが滲み出ています。
学校が舞台だけど、メインは文芸部の図書室。
時折出てくる先生や生徒、教室の雰囲気に懐かしさを感じつつ、裏で不倫してる先生が悩む姿が物語と反比例していて面白い。
最後には本当に上手くまとまってて、1時間位で軽く読める名作ですね。
3.天国はまだ遠く(2004年)
評価 6/10
仕事や人間関係に疲れた女性が死に場所を求めて日本海側の民宿にたどり着くが、そこで出会った人や景色、時間などに触れ合って自分を再生していく物語です。
瀬尾さん自身の教師の経験の中で赴任した田舎の学校での思い出ストーリーだそうです。
実家に帰ったような安心感と、懐かしさを感じる1冊でしたね。
疲れた時にまた読みたいと思う優しさが詰まってます。
4.幸福な食卓(2004年)
評価 8/10
独特の文体で家族のあり方を描く瀬尾まいこワールド。
父は父を辞め、母は家出してる普通じゃない家庭の話なんだけど、重い話も描き方が上手いのでめっちゃ気楽に楽しく読めます。
ラストは号泣モノだし、沢山日常に転がった気づきを貰った素敵な本。
自分もいろいろな人に守られて生きてきたんだなぁと改めて思いました。
5.優しい音楽(2005年)
評価 6/10
優しい音楽ってタイトルの通り、優しさに満ち溢れた表題作の入った短編集。
「幸福な食卓」「春、戻る」「そして、バトンは渡された」この辺の作品読んでたら抵抗なく入れるけど、どれもこれも一筋縄ではいかないちょっと変わった人達が出てきます。
旅行行くからって浮気相手に子供を預けたり、公園でホームレスのおじさんを拾ってきたり、一体何なんやこの設定。
意味わかんないまま読み始めたのに、読んでる途中で妙に家族みたいに溶け込んで、最後はしっかり泣かせるから憎いぞ。
表題作は、何となく先読めてたけど、美味しそうな料理と幸せそうな情景を描いてるのでほっこりさせてくれます。
「タイムラグ」で泣かされたけど、なんか良いよね、この関係性を描ける軽やかさって。
人と繋がるってめんどく事も沢山あるんだけど、こんな幸福度の高い関係性に満ち溢れてると思うと本当良いですよね。
瀬尾さんの書いた短編ならではの駆け抜ける軽快さは、何とも言えない読後感があってとても気持ちがいいです。
6.強運の持ち主(2006年)
評価 6/10
こちらは、短編小説。
ルイーズ吉田という占い師の日常に寄り添った、少し不思議な相談者との経緯をまとった温かな4編が描かれています。
特に起伏もなければ、オチも強くないんだけど、ほのぼのとした日常感が読んでる時の癒しをくれます。
日常に寄り添ってるからこその人間力が感じられる素敵なお話です。
7.温室デイズ(2006年)
評価 4/10
いじめがテーマの重い作品なんだけど、無法地帯の教室に何も介入しない先生達が歯がゆすぎる。
逃げるだけではなく、どうにかしたい気持ちで行動を起こすと標的にされてる。
読んでてとても苦しいし、もう少し救いの欲しい作品でした。
中学ってこんなに崩壊するのかって思うくらいに怖い世界でしたね。
8.見えない誰かと(2006年)
評価 6/10
瀬尾さんが中学校の教師をされていた時代を中心に切り取った内容で、教師の仕事とか、家族のこととかを描いたエッセイ作品です。
瀬尾さんの描く作品って、どれも少し力が抜けていて好きなんですが、それは瀬尾さん自体がちょっと抜けているからなのかと思ってたけど、やっぱりそうなのかと読みながら納得(失礼)
瀬尾さん自体がいっぱい助けられているし、色んな生徒や学校の環境を通して感じたことが作品となっているんだと、今までの作品の舞台や情景とリンクする場面がありましたね。
人間ってやっぱり育ってきた環境に人生左右されるんだなぁと、改めて感じさせてくれたし、物事や人の優しさをどう捉えるかで良くも悪くも人間性が変わってくるな〜と納得。
9.ありがとう、さようなら(2007年)
評価 6/10
瀬尾さんが中学校の先生をやっていた頃に書かれていたエッセイ集。
中学校という現場ならではの子供達とのやりとりがあまりにも懐かしくて、自分の中学校時代の先生を思い出しながら読んでしまいました。
笑いもあれば、涙もあって、まさにタイトル通りの作品だと思います。
瀬尾さんの作品って独特の軽いタッチと、ユーモアなセンスと、温かさのバランスがどれも素晴らしく好みなんですが、エッセイになるとより人柄が滲み出てて人間味があって面白いです。
現実はこんなに温かい場面ばかりではないとも思うけど、大人になってからあの頃を振り返る作品としてもおすすめです。
10.戸村飯店 青春100連発(2008円)
評価 9/10
タイトルからして全く予想のつかない物語の内容ですが、関西人らしい味を出したとても楽しい飯屋の家族のお話です。
兄弟って、親って、こんな想いを持って生きてきたんだね・・・(涙)
自分の人生に重なる部分も多くて、改めて親の存在の大きさを感じさせられました。
食事の風景や大阪人の人情なども溢れてる、愛のあるお話です。
11.僕の明日を照らして(2010年)
評価 6/10
再婚相手の父親からのDVを受ける子供が主人公の物語。
隼太と優ちゃんの一見仲の良さそうな親子に見えるけど、息子に手を出してしまう父と、それを母に露見させずになんとか止めようとする息子がとっても読んでて違和感・・・なんだけど、読み進めていくとその意味がわかります。
瀬尾さんらしい優しい感じでゆるく描かれてるんだけど、かなりシリアスな内容で当事者たちにしか分からない特別な感情がそこにはあります。
親がいないって経験をしたことがない為、この繊細な気持ちってすごく響きました・・・。
12.おしまいのデート(2011年)
評価 6/10
デートって言うと恋人とするものと思うでしょうが、この本は孫とおじいさん、先生と生徒、男子学生同士など、??と思ってしまうシチュエーションのデートを並べた短編集。
読み始めた時はちょっと不思議な関係も、読み終わったら涙が流れるような素晴らしい物語に仕上がってました。
瀬尾さん独特の会話のテンポは、短編でもバッチリハマります。
2話目の「ランクアップ丼」読むだけでもこの本の価値がありますね。
13.僕らのごはんは明日で待ってる(2012年)
評価 7/10
4編の短編からなる、高校から社会人までの2人の恋愛の話。
タイトルからは想像できない展開だったのですが、やっぱり瀬尾さんワールドは見事に人の気持ち闇の底から救ってくれます。
本当に会話のテンポと出てくるワードがツボすぎて、こんな暗い気分になったのに笑えますからね。
日常の尊さと当たり前に感謝していきましょう。
14.あと少し、もう少し(2012年)
評価 7/10
中学最後の駅伝大会を描いた青春のスポーツ小説です。
めちゃくちゃ面白くて、息つく暇なく一気読みしましたね。
瀬尾さんの描く中学生は、とても人間らしく悩みながら成長する姿がすごいカッコいい。
キャラ一人一人がクラスにいる様な存在で、読んでいてとても共感できる姿でしたね。
15.春、戻る(2014年)
評価 6/10
どの作品も変わった家族の形を見事に表現されるのですが、これは奇を衒ったおにいさんの存在で物語を上手く作っていくのが凄い見事。
不思議すぎる話なんだけどしっくり来るし、最後は納得できる終焉。
良い人しか出てこないので、ハッピーエンドなのもありがたいです。
16.君が夏を走らせる(2015年)
評価 8/10
瀬尾さんの文庫新刊は、名作「あと少し、もう少し」のスピンオフ物語。
あの青春の駅伝2区を走った、少し不器用な不良の太田君が主人公。
突然任せられた先輩の1歳10ヶ月の子供のお守り。
言葉も上手く話せない子どもに翻弄されながらも、一生懸命成長しながら、自分の居場所を見つけていく感動作でした。
17.ファミリーデイズ(2017年)
評価 6/10
エッセイ本とういう事ですが、普通のフィクション小説を読んでるよりも楽しい物語があるんですね。
とにかく日常の中で言葉出来るレパートリーが多いので、笑いがありすぎて腹痛いw
関西人の例えってなんであんなに見事なんでしょうね。
エッセイは、本当センスが出るけどここまで面白いと、嫉妬してしまいます。
18.そして、バトンは渡された(2018年)
〈親〉たちの愛を一身にうけて、〈親〉たちのことも愛して、いま十七歳の優子は幸せなのだ。
評価 9/10
母親2人、父親3人と言う想像も出来ない設定の物語ですが、巧みな会話と人間味溢れるキャラの持ち味がとても面白く描かれております。
親の離婚ってネガィブにしか思えないのにこんなにも明るく受け止められて、何に繋がりも無い人達から愛情を注がれる子供の存在が凄いです。
明日が二倍にできるなんて、すごいと思わない?」
森宮さん最高でした。梨花さんの想いにも泣かされるし、最後まで本当に温かいお話です。
19.傑作はまだ(2019年)
評価 6/10
「やっぱりはじめましてで、いいんだよね?」で始まる物語。
「春、戻る」では、不思議なおにいさんの出てくるお話でしたが、こっちは会った事のない実の息子の物語。
一癖も二癖もある家族のあり方を普通に描く瀬尾さんの中でも、また変わった話でした。
特に父親の天然記念物みたいな化石な姿にはw
明日がもっとすばらしいことをきみはぼくに教えてくれた。
今日はきっと君を知る日になる。
それでも、最後はきっちりと締めてくれる温かさが好きですね。
20.夜明けのすべて
「今の自分にできることなど何もないと思っていたけど、可能なことが一つある」
職場の人たちの理解に助けられながらも、月に一度のPMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない美紗は、やる気がないように見える、転職してきたばかりの山添君に当たってしまう。
山添君は、パニック障害になり、生きがいも気力も失っていた。
互いに友情も恋も感じていないけれど、おせっかいな者同士の二人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになるーー。
人生は思っていたより厳しいけれど、救いだってそこら中にある。
生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。
評価 8/10
出口のない病気は、暗い毎日の底が見えない気分になると思う。
そんな時に気遣って優しく接してくれる人の存在の大きさってすごいよね。
おせっかいに感じる言動も、自分の事を考えてくれる想いや時間があるこそ出来ることなんだよね。
最初は自分勝手な二人に思えてたけど、読めば読むほどに人間味に溢れた優しさを感じました。
今まで家族や恋人の温かい物語を書いてた瀬尾さんの、人を想う気持ちが溢れた優しい作品です。
21.その扉をたたく音(2021年2月)
ミュージシャンへの夢を捨てきれないまま、怠惰な日々を送っていた宮路は、ある日、利用者向けの余興に訪れた老人ホームで、神がかったサックスの演奏を耳にする。
音色の主は、ホームの介護士・渡部だった。「神様」に出会った興奮に突き動かされた宮路はホームに通い始め、やがて入居者とも親しくなっていく――。
人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編。
評価 6/10
29歳で無職のミュージシャンを目指す若者が主人公の物語。
老人ホームで出会った渡部のサックスの音に惚れ込み、ホームに通いこむうちにかなり図々しいじいちゃんばあちゃん達に色んな頼み事をされる日々。
瀬尾さんらしい文体で描かれる若者と老人ホームの人達の会話は、わかっていても笑ってしまうくらいに軽快で面白い。
少しずつ変わって行く日々の中で、青春を思い出しいながら一歩踏み出す決意をする主人公と図々しくもそれを後押ししてくれる老人達。
二人のセッションに、音楽に感動させられるし、最後は本当に泣かされた。
瀬尾さんの描く世界ってただ優しく、温かいだけじゃなく、日常にあるものの大切さとかをしっかりと伝えてくれるんですよね。
22.夏の体温(2022年)
評価 7/10
瀬尾まいこさんの新刊は、2つの短編が入った少しビターで、心がじんわりと温かくなる作品でした。
大人になったら忘れてしまう、小さい頃の楽しかったあの時間。
こんなに楽しい時間が、いつまでも続いてくれたらなと思う様な素敵な物語と関係性が温かく描かれてました。
23.掬えば手には(2022年)
評価 8/10
レモンイエローの装丁が素敵な優しさに満ちた作品でした。
読み終わった後に書いてるけど、じんわりと温かくなった心が満たされてる感じが最高です。
特に自分に取り柄がなくて、自信がないと思ってる様な方には、これはすごく響く内容だと思います。
存在意義って自分が思ってるよりも、周りのみんなは知っているんだよ。
読みながら自分にもって思えるし、きっと背中を押してくれる作品。
24.私たちの世代は(2023/7/24)
今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと。
不自由で息苦しかった毎日。
家で過ごすことが最善だとされていたあの期間。
多くの人から当たり前にあるはずのものを奪っていったであろう時代。
それでも、あの日々が連れてきてくれたもの、与えてくれたものが確かにあった――。
瀬尾さんの新刊は、コロナ時代が直撃した2人の小学生が主人公の物語。
今後忘れることはないだろうコロナ禍の数年間から15年先までの未来が舞台です。
社会に様々な影響を及ぼしたコロナが、子どもたちに及ぼす影響ってそこまで考えてなかったんだけど、この作品読んですごく大事な時期を失い、その後に大きな影響を与えられた子も多いんだろうな。
色んなことに制限がかかり、奪われたことを嘆き悲しんでいた時期なんだけど、今までの当たり前にあった人との繋がりの大切さを改めて教えてくれた貴重な時間でもあったんですよね。
失うことの方が目立つし、その度に悲しくなることは多かったけど、決してマイナスなことばかりじゃないってことを改めて思わされました。
今作は、瀬尾さんの作品の中では珍しい仕掛けがあって、読んでてちょっと新鮮な感覚がありました。
キャラや会話もいつもみたいな突拍子もない感じではないのが残念。
それでも、大事な部分はいつもの瀬尾さんの優しい言葉が詰まっていて、特に冴の母の言葉には涙が止まらなかったです。
当たり前にある日常の周りには、必ず手や愛を差し伸べてくれる人がいてわたしたちは生きているってことを再確認できる物語でした。
瀬尾まいこおすすめ作品ランキング
こちらでお勧め作品をランキングで紹介してます。
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