
寺地はるなさんの小説全作品や読んだ感想など紹介します。
登場人物も、物語も優しくて、読後感はとにかく気持ちいいのが特徴な寺地さん。
ちょっと生きにくい現実やモヤっとする言動だったり、人間関係に言葉でメスを入れてくれる作品が多いです。
寺地はるな 全作品一覧を順番にご紹介(新作・おすすめ・感想)
寺地はるなさんとは
1977年佐賀県生まれ。
会社勤めと主婦業のかたわら小説を書き始め、2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。(※Amazonより)
1.ビオレタ(2015年)
評価 6/10
恋人に婚約破棄された女性(妙)の再生の物語なんだけど、働き始めた雑貨屋さんが「棺桶」を売ってる風変わりな店主 菫さんのお店。
道端で泣いてた妙に対して、「不幸な自分に酔うのはやめなさい」とパンチのある言葉をかける菫さん。
雑貨屋で棺桶?って思いながら読み始めたのですが、死んでしまった人を入れるわけではなくて、忘れられない記憶や思い出の品を入れる美しい箱です。(ガラスの海は骨壷でしたね)
棺桶を求めやってくるお客も、主人公たちも、みんなどうしようもない感情を抱えている人たちばかりで、一部共感できて、一部クズぽっくて、人間らしいなと思いながら読めました。
モヤモヤと共感が上手く混じった主人公の成長具合が、同じような自分に自信のない人の背中を上手く押してくれそうな気がして心地よかったと思います。
2.ミナトホテルの裏庭には(2016年)
3.月のぶどう(2017年)
4.今日のハチミツ、あしたの私(2017年)
5.みちづれはいても、ひとり(2017年)
6.架空の犬と嘘をつく猫(2017年)
7.大人は泣かないと思っていた(2018年)

評価 8/10
親子、恋人、友情と愛のこもった作品です。
生きるって大変だけど、そんな大変な人生だからこそ誰かと生きていきたいと思う。
最後の「一緒にいられてうれしいなと思って」でモヤモヤした感情が一気に抜け落ちて、ふわっと涙腺崩壊でした。
8.正しい愛と理想の息子(2018年)
9.夜が暗いとはかぎらない(2019年)

評価 8/10
1話が2~30ページ程度なのに、寺地さんの描く短編ってめっちゃ印象深いエピソードと言葉で作られてるので、立体感がすごいんですよね。
女性だけじゃなく、赤ちゃんからおじいちゃんまで、どうしてこんなに人の気持ちを代弁できるの?っていつもながらに感心します。
生きるって事に悩んだり、愛する人のために悩んだり、私たちの悩みは常に尽きないけど、そんな心を少しでも軽くしてくれる言葉が詰まってます。
10.わたしの良い子(2019年)
11.希望のゆくえ(2020年)
12.水を縫う(2020年)

評価 8/10
家族それぞれの視点で語られる短編でありながら、全ての話が繋がっていて各々の想いが詰まった物語になってます。
男の子が手芸をしたり、女の子がかわいい服を否定したり、母親らしい母親になれなかったり、自分のしたい事を我慢してきた祖母。
普通って言われると、普通って誰が決めたの?多数決?って聞き返したくなるんだけど、そんな言葉を噛み締めたくなる言葉が沢山詰まってます。
そこから先は、あの子の問題。無視して雨に濡れて、風邪ひいてもそれは、あの子の人生。
今後風邪をひかないためにどうしたらいいか考えるかもしれんし、もしかしたら雨に濡れるのも、結構気持ちええかもよ。
あんたの言うとおり傘持っていっても晴れる可能性もあるし。
あの子には失敗する権利がある。雨に濡れる自由がある。」
それぞれが、それぞれの視点で気づきを与えてくれる家族の物語でした。
13.やわらかい砂のうえ(2020年)

評価 7/10
自分を好きになれなくて、自信がなくて、他人にも簡単に心が開けない主人公。
俗に言うめんどくさい人って思われるタイプの人間なんだろうけど、めちゃくちゃ心の内面を描くのが上手くて、ハッとされる場面とか、描写が多かった。
女性にはかなり共感する部分があると思うし、男性には過去に見過ごした過ちを反省する部分が沢山あるだろうと思う。
「でも、それはただ自分が歩くための靴なんだよね。他人を殴るために使っちゃいけないんだって」
寺地さんの心情の細かな表現力と絶妙な言葉選びには本当にハッとさせられます。
14.彼女が天使でなくなる日(2020年9月発売)
そこで育った千尋は1年前に戻ってきて、託児所を併設した民宿を営んでいた。
島には「母子岩」と呼ばれる名所があり、家族・子供・友達のこと……悩みを抱えたひとびとがそのご利益を求めて訪れる。
複雑な生い立ちを抱える千尋は、島の人達とお客さんと触れ合いながら、自らの過去と今を深く見つめていく。
明日への新しい一歩を踏み出す「強さ」と「やさしさ」が心に沁みる、書き下ろし長篇小説。

評価 6/10
島にある民宿が舞台となった5つの短編集で、それぞれに家族や子供に問題や悩みを抱える人達がやってきます。
みんなちゃんとした親になり、良い子に育てたい。という願望を持ってる。
毎回寺地さんの小説を読むと、当たり前だと思わされてたことが全部違和感に感じてしまう。
15.どうしてわたしはあの子じゃないの
中学の頃に書いた、大人になったお互いに向けての「手紙」を見つけたから、30才になった今開封しようというのだ――。
他人との間で揺れる心と、誰しもの人生に宿るきらめきを描く、感動の成長物語。
評価 6/10
毎回突き刺さるフレーズの数々で、「うんうん。わかる」と共感の嵐なのですが、今回も流石って思える共感力のある“他人への憧れ・嫉妬・後悔”を綴った田舎町の物語。
誰もが感じる他人への憧れ。
寺地さんってほんとこの辺の感情を上手く描くよなって思う。
ただ最近の話って設定や伝えたい事が似てるので、あまり新鮮じゃなかったのがマイナスです。
16.ほたるいしマジカルランド(2021年)
評価 6/10
寺地さんの新刊は、テーマパークを舞台とした1週間の物語。
曜日毎に登場人物の視点が変わりながら、その人の抱えてる苦悩や悩みを他の人が気づきをくれる。
社長の優しさや遊園地の存在意義など、感じられることがたくさんあり、そこで働くこと意味とやってくる人の気持ちはやっぱり特別なんだなと。
コロナ時代だからこそ、人に希望とか豊かさの意味を教えてくれる遊園地の物語を描いたのかな?と思ってしまいます。
17.声の在りか(2021年)
評価 7/10
タイトルから、声が出ない人の話かな?と思ってましたが、息苦しい世の中で自分の言葉を失った女性が主人公の物語。
小学生の息子を育てながら、ママ友や夫との会話に本音が出せずに疲れ切った毎日を過ごしている彼女。
そんな彼女の家の近所に出来た民間の学童。
そこを仕切る要さんとの出会いによって、自分の想いに正直になりやがて、本当に伝えたい言葉を取り戻していく物語です。
いやーこの作品も、相変わらず共感の嵐。
日常の中で、心の中に仕舞い込んでしまった本音ありますよね。
人には同調出来ないし、自分の意見もうまく言えない人って生きづらい。
コロナ化において、本音隠してる人もっと増えてると思うし、疲れてる方も物凄く増えてると思う。
この作品読んで、少しでも共感したら、今日から自分変えていけるでしょう。
それくらいの魔法があると良いなと思う作品です。
人間関係って難しいなと思うからこそ、本音の使い方次第で生きるのが楽になるはず。
寺地さんらしい主婦目線の言葉もめちゃくちゃ鋭くて、もっと男性にも届いたら良いのになと思います。
18.雨夜の星たち(2021年)
同僚星崎くんの退職を機に、仕事を辞める。
他人に興味を持たない長所を見込まれ三葉は「お見舞い代行業」にスカウトされ、移動手段のないお年寄りの病院送迎や雑用をする「しごと」をはじめる。
評価 6/10
今作は他人に興味がなくて、感情を察しない主人公の三葉がお見舞い代行という「しごと」を通して関わり合いをしていく人たちとの日常の物語。
いつもの寺地さんとは違うんだけど、やっぱり寺地さんらしい日常の些細な出来事、言葉、感情をうまく言語化してるんですよね。
「他人の仕事をちゃんとしてるとかちゃんとしてないとか、お母さんが決める権利はないよ」
こういった何気ない一言がとても好きです。
知らない世界を否定したり、自分の思い通りにならないから避難する人って沢山いるけど、それが子どもでもその人の人生なんだから自由にしようよって思う。
見えないものが苦手で、全部はっきり言って欲しい。
これは人によっては難しく感じることもあるけど、ここまで割り切れる性格だと凄いよね。
リルカや姉との関係性とか、毒親の話とか、星崎くんとか、慌ただしく感情を揺さぶられましたね。
ほんと何気ない話なのでピンとこない人も多いかもしれないけど、刺さる人に刺さって欲しい1冊です。
寺地さん読むと人の心や感情を安易な言葉によって簡単に踏みにじれなくなるので、発する言葉にめっちゃ気を使うようになりますね。
19.ガラスの海を渡る舟(2021年)
そこには、兄妹二人が営むガラス工房があった。
兄の道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調したり、他人の気持ちに共感したりすることができない。
妹の羽衣子は、道とは対照的に、コミュニケーションが得意で何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいる。
正反対の性格である二人は互いに苦手意識を抱いていて、祖父の遺言で共に工房を引き継ぐことになってからも、衝突が絶えなかった。
そんなガラス工房に、ある客からの変わった依頼が舞い込む。それは、「ガラスの骨壺が欲しい」というもので――。
評価 7/10
今作は、亡き祖父のガラス工房を受け継いだ兄弟の物語。
すごく日常に寄り添った家族の物語と、生と死が淡々と描かれています。
10年間の様子を兄弟二人の目線で進むのですが、最初と最後の印象がガラッと変わったね。
妹の方がとても嫌な感じに思えてましたが、徐々に徐々に兄や周囲の人々に影響されて、理解し、変わっていく。
タイトルの海の通り、広い海の中で彷徨ってる二人が、段々と歩み寄って近づいてくるようなイメージで読み終わりました。
表紙のガラスと海と位置関係が、とても見事に表してるなと本を閉じて思いましたね。
20.タイムマシンに乗れないぼくたち(2022年)
そんな感情に寄り添い、ふと心を軽くする物語
21.カレーの時間(2022/6/8)
終戦後と現在、ふたつの時代を「カレー」がつなぐ
絶品“からうま”長編小説
ゴミ屋敷のような家で祖父・義景と暮らすことになった孫息子・桐矢。カレーを囲む時間だけは打ち解ける祖父が、半世紀の間、抱えてきた秘密とは――ラスト、心の底から感動が広がる傑作の誕生です。
評価 8/10
「カレーの時間」という、とても美味しそうなタイトルなんだけど、これは生きた時代による価値観をそれぞれの視点で、とても考えさせてくれる1冊でした。
他人なら放っておけばいいお祖父さんも、身内なら頑固でも放っておけないからと、一緒に住むことになった孫。
時代錯誤な行動、発言がもう嫌ってくらいに恥ずかしいのだけど、みんな時代が変わっていく中で譲れない部分、頑固で変われない部分を持ってるんだなと今なら可愛く思えるから不思議。
毎回寺地さんの物語を読むと、いろんな人の視点に物語が変わっていくので、学びが多いです。
22.川のほとりに立つ者は
松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。
「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。
評価 7/10
寺地さんの中ではめっちゃ好きになれる話ではないんだけど、ガツンと価値観を正してくれる、学びのある印象深い1冊。
常識なんて、正しさなんて、絶対的な正義はないよね、と改めて思いました。
一方だけじゃなく、いつも多面的に物事を考えさせてくれる気づきの多い作家さんなんですが、人と人の関係においてとても刺さる作品でしたね。
23.白ゆき紅ばら(2023年2月)
24.わたしたちに翼はいらない(2023年8月)
4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。
朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。
マンション管理会社勤務の独身――園田。
いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。
25.こまどりたちが歌うなら(2024年3月)
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う”私たち”が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!
評価 6/10
小さなお菓子メーカーに勤める人たちの人間関係のお話。
いとこが社長を継いだ会社に入社した主人公は、古い体質の会社の問題点を指摘して、その都度空気が悪くなる。
中小企業あるあるなんだけど、どうしても体質って変われないので、変なメスに入れようとすると人間関係がややこしくなるんですよね。
それでも言い続ける主人公の姿は素晴らしいけど、実際に会社にいたら面倒な人って煙たがられるタイプだろう。
「大丈夫?」は便利な言葉だけど、それだけじゃダメ。
人は目に見えている一面だけじゃなくて、どんな苦労をして生きているか分からないという事だけは常に思っておこうと改めて感じました。
26.いつか月夜(2024年9月)
特に夜に来るそいつを遠ざけるため、とにかくなにも考えずに、ひたすら夜道を歩く。
そんなある日、会社の同僚・塩田さんが女性を連れて歩いているのに出くわした。
中学生くらいみえるその連れの女性は、塩田さんの娘ではないという……。
やがて、何故か増えてくる「深夜の散歩」メンバー。
元カノ・伊吹さん、伊吹さんの住むマンションの管理人・松江さん。
皆、それぞれ日常に問題を抱えながら、譲れないもののため、歩き続ける。
いつも月夜、ではないけれど。
評価 7/10
不安やモヤモヤを抱えて夜道を歩いていたら、同じような悩みを持った知り合いたちの仲間が増えていき、一緒に歩みながら救われていく。
こんな気持ちの時って一人で前に進むって難しい時もあるけど、誰かと一緒なら心強い。
すごくめんどくさい人達なんだけど、寺地さんらしい繊細な人間の感情がここに込められていて、救われる人がいるだろうなと思う素敵な作品。
最近の作品の中では、読後感が晴れて良かったです。
27.雫(2024年11月)
ビルの取り壊しに伴うリフォームジュエリー会社の廃業を起点に時間をさかのぼりながら、物から物へ、人から人へと、30年の月日のなかで巡る想いと“つながり”、そして新たなはじまりを描く、寺地はるな(2023年本屋大賞9位)の真骨頂が光る、感動長篇。
出会い、卒業、就職、結婚、親子、別れ……。中学の卒業制作づくりで出会った4人がそれぞれ直面する数々の選択と、その先にある転機、人生のままならなさ。不器用に、でもひたむきに向き合う彼らの姿を通して、日常のささいな不安や違和感を丁寧にすくい取って人の弱さにそっと寄り添いながら、いまを生きるあなたにエールを贈る大人の青春小説。
28.
(2025年3月)町内でいま話題をさらっているのは、その店のママ・愛里咲とその夫で売れない小説家・啓の行方。
ある人によれば、離婚したらしい。
別の人によれば、妻が甲斐性なしの夫に三行半をつきつけた、という。
また他の人いわく、夫が恐妻から逃げ出した、と。
邪気のない噂が邪気混じりの噂を巻き起こしていくーー急な閉店と夫婦の蒸発についての真相とは?
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